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トッキー
2023.2.3 13:51新刊情報

「酷さ」や「残酷さ」もある程度伝えるのが本当の「教訓」では?『よしりん御伽草子』

続けて公論サポーター・メーリスから
『よしりん御伽草子』
感想ご紹介です!!

 

 

「よしりん御伽草子」ようやく読めました。読んでみてまず驚いたのが、カニバリの描写があることでした。
昨今、カニバリの描写がある作品なんて「チェンソーマン」に微妙にあるくらいで、ここまで明確に描写されている作品を見たことがなかったので、若干引きました。
けれども「かちかち山」も私が子供の頃に読んでいた内容では、確かにおばあさんはたぬきに殺されて鍋の具材にされていたので、これがオリジナルに近い話だったなぁと思い出しながら読みました。
最終的には「謝ったら死ぬ病気」という現代の日本に蔓延る病につながっていくところが、さすがよしりん先生の描く「現代版御伽草子」だなと思えました。

「ももたろさん」は「既視感あるな〜」と思いながら読んでましたが「わしズム」に掲載されていたのですね。すっかり忘れていました。
桃から子供が産まれているコマは映画「エイリアン2」のエイリアンを彷彿とさせる不気味さが最高でした。
しかし、令和の今に読んでも哲学的な教訓めいたモノを感じざるを得ない、なんと言うか不気味な作品という印象でした。

「かさじぞう」については主要キャラ(お爺さん、おばあさん、各地蔵)がそろって純粋まっすぐ君で、純粋まっすぐ過ぎる存在がいかに社会にとって害悪かというのをギャグを通じて逆説的に学ぶことができて、令和の御伽噺にこれほど相応しい作品があるだろうかというほど面白かったです。

「うらしまたろさん」の最後コマの「女に本気で愛されたら男はやり直しがきかんちゃね。えずか〜。」のコマは、よしりん先生がこれまでの恋愛で培った女性についての哲学が凝縮されているようで笑ってしまいました。
ラストのコマの年老いたうらしまたろうは、なんとなくよしりん先生に似ている気もしました。

「かぐや姫」は初っ端からそんな話の入り方するのか〜と意表を衝かれ、最後もそんな終わり方するのか〜と意表を衝かれっぱなしでした。
ぶさいくが仮面だったというのはギャグ漫画家ならではの発想の自由さだからできた代物だと思います。

そして今日、よしりん先生の御伽草子についてのブログを読みました。
御伽噺が教則本になっているというのは「確かに!」と思いました。
最近の「猿かに合戦」ではカニの猿に対する報復が惨すぎるということになっているというのを最近知りました。どうやら最近の猿かに合戦ではカニの母親は死なないことになっているのだそうです。
母カニが死なない理由は「可哀想だから」とのことですが、それで本当にいいんかいな?と思います。
「酷さ」や「残酷さ」もある程度オブラートに包みながら若年者に伝えることが本当の教訓なのではないかと思いますし、それをやるのが本当の優しさだろうとも思います。
例えば、酷さや残酷さをオブラートに包み切ってしまうことで、現実に行われている、例えばウクライナの惨劇についての想像力の働きを抑制させてしまうことにもつながっているのでは無いかとも思います。

「よしりん御伽草子」は気楽に読めると思っていましたが、いい意味で騙されました。傑作でした。
(ハートマン軍曹さん)

 


 

昔話にまで「コンプライアンス」だかなんだか
しらないけれども、清廉潔白が求められて
人畜無害な教訓話にされてしまうのには
ふざけんな!と思うのですが、
だからといって、「狂気」やら「毒っ気」やら
だけにしか価値を認められないという
ことになってしまったら、たやすく
90年代の「鬼畜系ブーム」みたいなものに
堕してしまいます。

この危ういバランスを保って
読むことができるのか?
そんなスリリングな感覚も隠されているのが、
『よしりん御伽草子』だと思います!!

トッキー

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